( 2016.10.16 )



 先日慶應大学において 「ミス慶応コンテスト」 を主催している大学公認のサークル、 『広告学研究会』 において、女性学生への性的暴行事件があったという報道が週刊誌に掲載され、現在ニュースで採りあげられるようになっています。

 11月20日に開催される予定であった今年の 「ミス慶応コンテスト」 が中止になっています。 その理由はこの 「広告学研究会」 において9月に未成年の飲酒が発覚し、大学が解散命令を出した( PDF )ことによりますが、週刊誌の報道が正確である場合、更に重大な違法行為が行なわれていたということになります。 この事件は現在進行形中で全容が解明されていないので、動向に注目したいと思います。

 しかしこの事件に関する報道を見て、10年以上前に起こったとある事件を思い出した方は多いのではないでしょうか。 それは2003年に発覚し、社会を騒がせた大学公認サークルの組織的女性暴行事件である 「スーパーフリー」 の起こした事件。



  


 「スーパーフリー」 とは何か。 知っている人には2000年代初めに起こった事件自体を連想させるものですが、その名前は早稲田大学に存在したイベント系サークルの名称。 早稲田のサークルではあるものの、実際は他の大学にも勧誘を行い、東大や慶大など様々な学生が集まっていたようです( 俗に言うインカレサークル )。
 当時各大学にこのような 「イベントサークル( イベサー )」 が多数存在し、 「イベント」 を度々催すなど大規模なものもありました。

 「スーパーフリー」 も2000年から事件が発覚するまでは、早稲田大学に同好会として公認された上で活動をしておりました( 事件発覚前の2002年に他の大学におけるビラまき等の行為でのクレームがあったことにより、公認を剥奪 )。 大阪・名古屋・札幌・福岡に支部も設立していたようです。

 ちなみに飲酒行為も度々行なわれていたようですが、当時は現在と比べて未成年の飲酒、大学生となる18~19歳くらいであるとも実際は社会的な監視の目( 提供した店が逮捕されるなど )が今ほど厳しくなかったのが大きいでしょう。

 当時の 「スーパーフリー」 の代表は和田という事件発覚当時28歳の男性( 8年在籍後除籍、その後再入学 )。 8年間代表を務めており、イベント会社としても 「有限会社スーパーフリー」 を経営していたとのこと。 ちなみにこの時点で 「業界」 に数々の人脈が出来ていたらしく、イベント開催などにあたってそれが活用されていたようです。

 以下、当時スーパーフリー公式サイトにあったとされている宣伝動画。 ちなみに当時はYouTubeもなかった時代です。



 その時に代表和田の周囲にいて支援をしていた人物が誰かというのは業界人から反グレまで今日まで噂としてネットに流れていますが、正確なところは確かめようがないために具体的には真偽不明状態になっています。 そのあたりのことが書かれたひとつとしては、和田のケツモチとして広告代理店の後に闇金や詐欺に関わったという男性の話をもとに書かれた本をノンフィクションライター溝口敦氏が出しておられます( ただしこれの内容を疑問を示す意見もあり )。


スーパーフリーの起こした事件


 しかしこの 「スーパーフリー」、派手なイベントの裏で、飲み会の時に女性に対して集団暴行( 輪姦行為 )が度々行われていました。 結成されたのは明治大学に同じような集団暴行行為をしているサークルが存在し、それを模倣して行ったと言われています。
 手口としては、狙った女性を酔いつぶし、介抱するふりとして連れだし、集団暴行を行うというもの。 それは主に派手なイベントを開催し、そこでの二次会において狙っていた女性をアルコール度数の強い 「スピリタス」 で酩酊状態にさせて行っていたとのこと。
 そのようなサークルの危険性や知り合いが少ない地方出身などの女子生徒が狙われていたようです。 また、サークル内でそれぞれの役割分担もあり、被害者の女性に泣き寝入りをさせるように工作をしたり、笑顔の写真を撮影してあとで同意の証拠とするような行為、もしくは 「ヤクザがついている」 という脅しも行なっていたという悪質なものでした。
 また、スーパーフリーには 「ギャルズ」 と呼ばれる女性スタッフもいたのですが、知人女性をイベントに連れてきて男性スタッフに 「献上」 し、結果として被害に遭わせた例もあると言われています( ただしギャルズからは逮捕者は出ておらず、週刊誌の報道のみなので詳細は不明 )。

 スーパーフリーはそのような行為を繰り返していましたが、2003年5月、パーティーで女子大生に暴行したとして、代表の和田含む4名が婦女暴行容疑で逮捕。 早大生の他、他大学の生徒も含まれていました。 容疑者は逮捕当初は 「同意の上での行為」 を主張。
 事件の凶悪性が報じられるとたちまち注目を浴び、週刊誌やワイドショーでその事件やサークルが紹介されることになり、 「スーパーフリー」 の悪名が広まってゆきました。 2003年の当時はインターネットの普及期だったのも大きく、そのことが当時の掲示板でもよく書き込まれていました。

 その後2003年6月から11月にかけて、和田容疑者らが起訴、更に追加で逮捕者も出ます。 最終的には少年も含めて14人の逮捕者が出ることになりました。
 起訴されたものは、2001年12月に和田の事務所での輪姦事件、2003年4月の六本木の居酒屋において18歳の女性を13人で暴行した事件、そして前述の2003年5月の女子大生暴行事件となります。
 逮捕容疑は準強姦罪( 当時は集団強姦罪の規定がなかった )。


事件の判決


 その後裁判が行われ、2004年に主犯格とされた和田に対し、懲役14年の判決が下ります。 被告側は判決を不服として2004年11月17日に控訴、ここで棄却となり上告。 最高裁では2005年11月1日棄却。 懲役14年の実刑とした1、2審判決が確定しました。
 そのほか準強姦罪で起訴された残りの13人においても、懲役数年の実刑判決が確定しているようです。
 ただ、この事件の被害者総数は、一説では400名以上とされていますが、起訴されたのはそのうち前述の3件のみ。 実際に被害を受けた女子生徒も、事件の性質上泣き寝入り状態になっている人が相当数いると言われています。
 当時サークルに関係していた人間で、事件に関わったのに逃げおおせた人がどのくらいいるのか、逆に本当は事件に関わってなかったのに名前が出て深く関わったようにされているのか、それらの真実の多くは藪の中となってしまいました。

 2013年、週刊誌( 週刊アサヒ芸能2013年8月8日号 )において 『 「スーパーフリー事件」 10年目の真実』 という記事が掲載され、当時の証言や主犯和田の獄中での手記などが掲載されました。

 現在、裁判から11年が経過し、主犯格以外の人間は刑期が満了しています。 さらに主犯格の刑期の満了は丁度来年か再来年あたりとなりますし、刑期が短縮されていると今年にはもう釈放されている可能性もあります。


スーパーフリー事件の影響


 この事件の影響としては、さまざまなものがありました。


刑法に 「集団強姦罪」 規定の追加
 平成16年の刑法改正において 「集団強姦等」 の規定が第178条の2の規定として追加され、2人以上の者が共同して強姦( 準強姦含む )した場合、4年以上の有期懲役に処すると刑が加重されることになりました。 尚、実際に性行為に参加していなくても、その場にいれば成立します。 ちなみにこの刑は現行の刑法第177条とは異なり、被害者の告訴がなければ公訴を提起出来ない 「親告罪」 の対象からは外れます。


「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい」 発言問題
 また、この事件で当時与党の議員が少子化問題に関する討論会において、 「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい」 という発言をしたことが国内外含めた各所で報じられ、問題となりました( 議員は一度落選した後、再当選で復帰、現在は引退 )。

      太田誠一議員の「レイプは元気」発言


Googleサジェスト裁判
 さらに時代は10年近く進み2012年、Google検索においてスーパーフリー事件を検索した際のサジェスト( 関連検索表示 )機能において 「スーパーフリー」 との関係を表示がされることで名誉が傷つけられたとして、都内の男性が米国のグーグル本社などを相手取り検索結果の削除と慰謝料などを求める訴訟を起こしました。
 当時の記事によると 『男性は都内の大学に在学していたころ、スーパーフリーに入会していたが、事件とは無関係だった。 だが、グーグルで検索すると、インターネット掲示板などのページが列挙され、男性がスーパーフリーの幹部で事件に関与したかのような書き込みが表示される』 という状態であったようです。

 東京地裁は名誉毀損を認めて30万円の損害賠償を命じましたがその後Googleが控訴。 2014年1月の東京高裁判決においては名誉毀損やプライバシー侵害は認定されずに逆転敗訴となりました。 その後上告された模様ですが、ニュースやネットでの判例検索などかなり調べても出てこなかったのでいまだ継続中なのか判決が出たのかなどは不明。 ただ、地裁判決が再逆転して認められていれば 「1日につき100万円の制裁金」 とした報道がなされていたので、その通りになっていればニュースになるとは思いますが ……。

      ( archive )名前検索の名誉毀損訴訟、米グーグル本社が控訴 : 社会 : YOMIURI ONLINE( 読売新聞 )
      グーグルが逆転勝訴 検索予測の表示差し止め、東京高裁で  :日本経済新聞
      Google 元スーパーフリー所属の男性へ7億円の支払い発生の可能性 - ライブドアニュース


その後大学で起きたサークル絡みの事件


 スーパーフリー事件の影響は大きく、また不景気や社会的規制、とりわけ未成年の飲酒における厳しさの変化( 場所を提供した側が検挙される事例など )もあってか、その後この手のサークルは以前ほどは( 少なくとも外部に対しては )目立たなくなってゆきます。 しかしながら近年、大学サークルにおける飲酒、女性暴行など似たような騒動が発生し、その度に問題となっています。


京都大学のアメリカンフットボール部集団暴行事件
 2005年12月、京都大学のアメリカンフットボール部の部員3人が、酒に酔った女性二人を集団強姦したとして逮捕されます。 この事件において前述の集団強姦罪の規定が適用されることになります。
 結果、一人が懲役4年6ヶ月の実刑判決、その他二人が執行猶予付の有罪判決。 京都大学は3人を放学( 復帰不可 )処分として、その年は同大学のアメフト部もその年春の競技会を辞退することになりました。
これはサークル( アメフト部 )は飲みサーではなく、サークル絡みの犯行というよりは所属部員の一部が起こした不祥事となりますが、 「集団強姦罪」 の適用例として重要なのでここで挙げておきます。

      京大アメフト元部員、集団強姦容疑で逮捕 - nikkansports.com > 社会ニュース


明治大学・日本女子大学 「クライステニスクラブ」
 2014年、明治大学と日本女子大学の合同サークル 「クライステニスクラブ」 のメンバーが新宿歌舞伎町において集団昏倒をしている様子が報じられ、話題となります。 その後未成年を交えた大量飲酒が発覚し、公認取消・廃部となりました。

      本学公認サークルの処分について | 明治大学
      新宿コマ劇場前で女子大生が集団昏倒した異常事態、明大公認サークル「クライス」でスピリタスカプセル使用か


東京大学 「東大誕生日研究会」 内強制わいせつ事件
 さらに今年( 2016年 )になり、東京大学の 「東大誕生日研究会」 というサークルの主要メンバーが強制わいせつ容疑で逮捕され、その手口の卑劣さも含めて週刊誌に掲載され、話題となりました。
 2016年9月に逮捕された5人のうち3人が起訴され、主犯格とされる被告に強制わいせつと暴行の罪で懲役2年の求刑がなされ、現在も裁判が進行中( 2016.10.15現在 )。

      強制わいせつ東大生5人が所属“ヤリサー”の卑劣な手口 「女子大生の局部にドライヤー」 | デイリー新潮
      「強制わいせつ」東大生に待ち受ける罰〜勘違いエリートの末路(週刊現代) | 現代ビジネス
      酔わせた女性に強制わいせつ 東大生に懲役2年求刑 東京地裁 - 産経ニュース


過度な飲酒における死亡事例
 また、過度な飲酒における死亡事例も度々発生しております。

      立教大学テニスサークルにおける急性アルコール中毒死事件のあらまし
      亡き息子に、親ができること
      「東大コンパで泥酔死亡」責任は誰に? 「両親が1.7億円賠償請求」めぐり論議 : J-CASTニュース


  そして今回の慶應大学における騒動となります。



事件から10年以上経過していることでの風化


 スーパーフリー事件からすでに15年以上が経ち、現在の大学生の中にはその当時まだ物心つかなかった年齢の人もいますし、もうあの手のサークルが全盛だった時代には生まれてなかったという人も増えてくるでしょう。 そもそも大学というところは、毎年人が変わり、4年も経つと大半の人が入れ替わってしまうところです。 ということはその分そういった問題点の記憶も薄れがちで、生徒間だけでは危機意識の継承もされにくいのが現状です。

 風化しつつある現在、 このような事件のことやその危険性を思い出し、 それを現在の学生に伝え、 しないよう、 させないように警告をするのも、 大学をはじめとして先のスーパーフリー事件を知る大人の役目ではないでしょうか。 それは例えば1990年代に話題となったけど、 今風化しつつありその手の偽装サークルが大学内外に存在しているカルト系サークルやマルチ商法サークルにおける危険性も同じでしょう。



- 追記 -

 慶應大学の事件においてはまだ事件の全容が掴めていない状況ですが、仮にスーパーフリーと似たことになった場合、かつてそれによる世論の高まりで集団強姦罪が制定されたように、今議論されている性犯罪への重罰化における、強姦罪の非親告罪化の議論も加速する可能性があるように思えました。

 あと、事件の根本にスーフリと同じような組織的、人脈的な要因、泣き寝入りになっているような案件がなかったかも被害者を傷つけないように配慮しつつ注目する必要があるでしょう。