和田真一郎 判決全文



◆H16.11. 2 東京地方裁判所 平成15年合(わ)第275号,第375号,第526号 準強姦

事件番号:平成15年合(わ)第275号,第375号,第526号
事件名:準強姦
裁判年月日:H16.11. 2
裁判所名:東京地方裁判所
:刑事第2部

判示事項の要旨:
有名大学の学生等で構成されるイベントサークルの関係者らによる3件の集団準強姦事件について,同サークルの元代表が懲役14年に処せられた事例

平成16年11月2日宣告
平成15年合(わ)第275号,第375号,第526号
判決
本籍
住居
職業無職(元大学生)
昭和49年7月30日生
上記の者に対する準強姦被告事件について,当裁判所は,検察官齋藤博志及び弁護人門上千恵子
各出席の上審理し,次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役14年に処する。
未決勾留日数中330日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
  被告人は,

第1
  B及びCと共謀の上,平成13年12月19日午後8時30分ころから,東京都豊島区ab丁目c番d号所在の《中略》において,強いて被害者甲(当時19歳)にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,その心神を喪失させた上,同日午後10時ころから同月20日午前1時30分ころまでの間,同所において,順次同女を姦淫した。(平成15年8月21日付け起訴状記載の公訴事実)

第2
  B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L及びMと共謀の上,平成15年4月27日午後7時30分ころから,同都港区ef丁目g番h号所在の《中略》ビル12階にある居酒屋R店内において,強いて被害者乙(当時18歳)にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,抗拒不能にさせた上,同女を人通りのない同ビル11階にあるT出入口前フロアーに連行して,同日午後8時20分ころから午後10時ころまでの間,同所において,順次同女を姦淫した。(同年11月19日付け追起訴状記載の公訴事実)

第3
  C,D,E及びNと共謀の上,同年5月18日午後8時ころから,前記居酒屋R店内において,強いて被害者丙(当時20歳)にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,抗拒不能にさせた上,同日午後8時30分ころ,同女を人通りのない前記T出入口前フロアーに連行して,そのころから同日午後9時ころまでの間,同所において,順次同女を姦淫した。(同年6月30日付け起訴状記載の公訴事実)

(証拠の標目)  《省略》

(法令の適用)  《省略》

(量刑の理由)
1 事案の概要
本件は,有名大学の学生等で構成されるイベントサークル「スーパーフリー」の代表であった被告人が,同サークルのスタッフ,OB,その他同サークルの関係者ら(以下,これらの者をまとめて「スタッフ等」ないし「関係者ら」ということがある。)と共謀の上,同サークルの事務所で開催された飲み会や同サークルが主催するパーティー等の二次会に出席した被害女性3名に対し,それぞれアルコール度数の高い酒を立て続けに多量に飲ませて,同女らを泥酔させ,心神喪失ないし抗拒不能の状態に陥らせた上,密室である同事務所内,あるいは二次会会場から連行した人気のない場所において,同サークルの関係者である多数の共犯者らと共に順次同女らを姦淫したという3件に及ぶ準強姦の事案である。

2 被告人の責任を基礎付けるべき事情
(1) 本件の背景事情
ア 被告人とスーパーフリーとの関係
(ア) 被告人は,平成6年4月,U大学政治経済学部に入学して間もなく,同大学の学生が設立したサークルであるスーパーフリーに加入した。同サークルは,ディスコパーティーや各種ツアー等のイベントの企画・運営を目的とするサークルであり,被告人が加入した当時は,毎年4月と5月に居酒屋で飲み会を開く程度の小規模な活動しか行っていなかった。しかし,平成7年6月ころ,被告人が同サークルの代表に就任すると,様々なイベントを企画するようになって,次第にその開催するダンスパーティーや飲み会等の規模を拡大化させていき,平成15年当時には,東京のみならず全国各地に支部を置いて,1回当たり千数百人もの客を集めるほどの大規模なイベントを企画・運営するようになっていた。
その間,同サークルの他のスタッフらは,順次大学を卒業してその活動から引退していったのに対し,被告人は,留年したり他の学部に再入学するなどして同大学に在籍しながら,自分の後継者がいないなどとして,本件各犯行当時まで一貫して,同サークルの代表の地位にとどまり,同サークルの運営とそのイベント活動の指導等に携わり続けた。

(イ) そのため,被告人とスーパーフリーのスタッフらとの年齢差が次第に広がり,被告人の発言権が飛躍的に強くなって,本件当時は,同サークルが主催するイベントの内容や全国展開の方法等についても,最終的な決定はすべて,被告人が行っていた。しかも,被告人は,平成14年3月ころからは,同サークルの運営に関与するスタッフを,サークル活動への協力の姿勢やイベントのチケットの売上枚数等によって,1軍,2軍,ボーイズなどと格付けし,こうした地位の昇格等を最終的に決定するとともに,スタッフらの指導に当たり,時には暴力を振るうなどして,スタッフを統制するようにもなっていた。
そうしたことから,同サークル内では,「オール・フォー・A」という言葉が広く用いられていたことにも象徴されるように,被告人の権勢,その発言力ないし影響力が,他の同サークル関係者らとは比較にならないほどに大きなものとなっていったのである。

イ スーパーフリーの活動実態及び被告人の果たした役割
(ア) 前記のように,スーパーフリーが大規模なイベント等を企画・運営して成功を収める一方で,被告人を始めとする同サークルのスタッフ等は,平成11年ころから,イベント後の二次会等として開催する飲み会において,参加した女性に対し,飲酒を強いるなどして泥酔させ,カラオケボックスや居酒屋の非常階段等の人目に付かない場所に連れ込むなどして,複数のスタッフ等で順次姦淫する行為を繰り返すようになった。
同サークルの関係者らは,このような輪姦行為を「回し」,「回転」あるいは「ローリング」などと呼びならわしていた(以下,単に「回し」という。)。そして,被告人は,平成13年3月ころから,同サークルの相談役であったBと判示のマンションにある自宅兼同サークルの事務所(以下「事務所」という。)に居住していたところ,同事務所においても,このような回しが行われるようになり,以後,被告人を始めとする同サークル関係者らが,酔いつぶした女性を同所に連れ込んでは,しばしば回しを行うようになったのである。

(イ) スーパーフリーの関係者らの中では,このような回しに積極的に参加するグループを「鬼畜班」,参加に消極的なグループを「和み班」などと呼ぶこともあったが,被告人は,前記のように同サークルの代表として他のスタッフらを統制し,同サークル関係者らに対する強い影響力を保持しながら,この「鬼畜班」に属して,平成11年ころからは,自ら中心となって,一貫して回しに参加し続けていた。しかも,被告人は,折に触れて,同サークルのスタッフやOBらに対し,「回しに参加しないスタッフは一人前ではない」,「回しによって連帯感を高める」といった趣旨の,回しを正当化し,これへの参加を奨励するような発言を繰り返していたほか,大学新入生歓迎のイベントを行う毎年4月の時期には,「4月は撃てる」,「4月のためにSに事務所を置いている」,「新入生の女は酒も弱いし,ゲームも弱いから,すぐにでも回せるんだ」などと言って,飲酒に慣れていない新入生を標的とした回しの実行について強い意欲を示していた。
こうした被告人の言動等に触れるとともに,繰り返し回しに参加するなどして,同サークルの関係者らは,次第に,その開催する飲み会等の後には回しが行われることを当然視して,回しへの参加を期待するようになっていった。

(ウ) 本件各犯行はいずれも,このような状況の下で,被告人を含むスーパーフリーの関係者らにより,それまで同サークルが常習的に繰り返してきた回しの一環として,組織的に敢行されたものである。

ウ 弁護人の主張について
(ア) なお,弁護人は,被告人がスーパーフリーのスタッフ等に対し「回しに参加しないスタッフはスタッフではない」,「回しに参加しないと連帯感が生まれない」などと言ったり,あるいは,回しへの参加の有無により同サークルにおけるスタッフの扱いに差を設けるなどして,スタッフ等に回しを強制し,あるいはこれを奨励した事実はない旨主張し,被告人も,これと同様の弁解をしている。そして確かに,本件証拠上,被告人が,スタッフ等に対し,回しへの参加を強制ないし命令したり,同サークル内において,回しに参加しないスタッフを特に不利益に取り扱うなどした形跡は,特段見当たらない。

(イ) しかしながら,前記イ(イ)で認定した被告人の言動等は,スーパーフリーのスタッフであった分離前の相被告人E及びM並びにOBであったG(以下,このウ項では3名をまとめて「Eら」という。)の各公判供述によって優に認定することができる。すなわち,Eは,被告人が,同サークルの大阪支部のスタッフについて,「輪姦に参加しないスタッフは一人前ではない」旨発言し,同サークルのミーティングの場で,イベントの客の動員数を増やすため二次会後の輪姦をやめたらどうかという意見が出された際には,「あり得ない。二次会はおれの生き甲斐だ。」などと言って一蹴していたと供述している。また,Gは,事務所で雑談をしている際に,被告人が,時には,「女は撃つための公共物だ。みんなで撃てれば,連帯感が生まれる。スタッフのやる気が出る。」などと言っていた旨供述し,Mも,被告人が,「回しによって連帯感を高める。そうすればやる気が出る。それがイベントを成功させる秘訣である。」という趣旨の発言をしていたと供述している。さらに,G及びMはそれぞれに,毎年4月の時期になると,被告人が,「4月は撃てる」,「4月のためにSに事務所を置いている」,「新入生の女は酒も弱いし,ゲームも弱いから,すぐにでも回せるんだ」と言っていたと供述しているのである。

(ウ)a この点,弁護人は,Eらについて,いずれも被告人とは共犯者の関係にあって,自らの刑事責任を軽減するため捜査機関に迎合して殊更に被告人に不利益な事実を供述しているものであり,上記各供述は信用できないなどと主張する。
b しかしながら,Eらの上記各供述は,被告人がスーパーフリーの代表の立場から回しを肯定して奨励するような発言を繰り返し,同サークルのスタッフやOBらがその強い影響を受けていたことについて,それぞれに記憶する内容に基づき述べたものとしてよく合致しており,その意味から,相互に信用性を補強する関係にあるといえる。しかも,これらの供述で指摘された被告人の発言内容や発言の際の状況は,それ自体として具体的かつ迫真性に満ちているほか,Eらの供述内容や供述態度に照らしても,Eらが,被告人を陥れるために殊更虚偽の供述をしているような様子は何らうかがわれず,むしろ,Eらは,それぞれに,自らが犯行に関与したことは最終的に自分の責任であることを明言した上で,真摯に供述している様子が看取できるのである。
c さらに,Eらのみならず,P,D,B,C及びHといったスーパーフリーの多くの関係者らが,被告人から回しに参加するよう直接に勧められたこと,被告人が回しに対して特に積極的であったばかりか,飲み会において女性を酔いつぶしたスタッフらに対し,「動きがいいな」と言ってほめていたことなどについて,そろって供述しているのであって,これらの供述から認められる被告人の言動もまた,被告人が平素より回しを肯定する発言を繰り返すとともに回しを奨励していた事実,そして,Eらの前記各供述の信用性を裏付けるものとみることができる。
d そして,被告人も,その公判供述において,回しに参加した経験のある者に対しては,親しい仲間内のわい談として,回しを肯定するような発言をしたことや,共犯者に対し,「撃てば」,「撃てよ」などと言って回しを勧めたことを認めている。また,被告人は,平成15年3月のスーパーフリーのミーティングでスタッフらに対して,「4月は撃てるぞ」と言ったが,この「撃てる」には回せるという意味も含まれることを認めているのである。
もっともこの点,被告人は,回しをしたくない者については,1対1で合意の上でセックスすればよいという趣旨であり,スタッフにとって4月がいかに大切であるかを認識してもらうために,冗談を交えて分かりやすく説明したものにすぎず,決して回しを奨励したものではない旨弁解する。しかしながら,同サークルでは,前記のように,飲み会等の後に回しが度々行われてきたことにも照らすと,「4月は撃てるぞ」という発言について,被告人の弁解するような趣旨のものとして理解することは困難であり,むしろ,被告人が新入生歓迎のイベントに関連付けてこうした発言をすること自体,正に回しを奨励するものとみるべきものであって,既にみたところの,「回しによって連帯感を高める。そうすればやる気が出る。それがイベント成功の秘訣である。」といった趣旨の被告人の発言とも軌を一にするものと捉えることができるのである。

(エ) そうすると,Eらの前記各供述はいずれもその信用性に疑問の生ずる余地はないところ,Eらを中心とするスーパーフリー関係者らの供述から認められる被告人の発言内容やその際の具体的状況,既にみた同サークル内での被告人の地位や影響力といった諸事情を総合すれば,被告人が同サークルのスタッフやOBらに対して回しを肯定し奨励する発言を繰り返していた事実を優に認めることができるのであり,これに反する趣旨の弁護人の前記主張は採用することができない。

(2) 本件各犯行の態様等
ア スーパーフリーにおける回しの手口
(ア) スーパーフリーでは,飲み会に参加した女性を酔いつぶす手段として,《中略》を多用していた。そして,同サークル関係者らは,普段から飲み会を主催してそのような経験を数多く重ねており,合宿等を通じて,《中略》の手口についていろいろ工夫してそれぞれに精通していたほか,《中略》仕向けていた。
さらに,同サークルの関係者らは,《中略》酒を飲まざるを得ない雰囲気を作り,《中略》女性が酩酊状態に陥っても,手加減することなくなおも執ように《中略》立て続けに飲酒を強要しており,時には,同サークル関係者らが酒の入ったコップを直接女性の口元に押し付け,無理やり飲ませることまでしていた。

(イ)a しかも,スーパーフリーが主催する飲み会では,女性を早く酔いつぶすために,日本酒や焼酎を多量に飲ませていたほか,平成13年4月ころからは,《中略》を,それと気付かれない程度に通常の酒やサワー等に混入して,《中略》高濃度の酒を女性に多量に飲ませており,この《中略》飲み物は,同サークル関係者らの間では「スーパー」又は「スペシャル」などと呼ばれていた(以下「スペシャルサワー」という。)。
このスペシャルサワーは,平成13年4月ころに,被告人とBが,女性を素早く酔いつぶすための道具として,《中略》2人で飲み比べを行うなど試行錯誤を繰り返した末に,《中略》編み出し,これを実際に同サークルの飲み会等で使用するようになったものである。当初は,被告人も,飲み会の際に自ら調合するなどしていたが,平成14年ころ以降は,この《中略》方法が,BやCらを通じて,スタッフ等の間に順次伝授されていった結果,飲み会の際には,特に指示がなくても,スタッフ等により,《中略》各テーブルに配られるようにまでなっていた。
b《中略》

(ウ) そのうえ,スーパーフリーでは,酔いつぶした女性を回しのために別の場所に連行する際などには,その女性の友人等に邪魔されないように,同サークルの関係者らが,《中略》などしており,このような行為は「ブロッキング」と呼ばれていた。また,事務所以外の場所で回しを実行する場合には,関係者らが見張りに立つなどしており,このようなブロッキングないし見張り行為は,邪魔が入ることを排除して,回しの実行を確実にするとともに,外部への発覚を防止するために,関係者らが,必要に応じそれぞれに分担し合いながら,姦淫を終えた者と次々と役割を交替するなどして,回しに参加する者全員が協力し合って行っていたものである。

(エ) そして,これらの手口は,前記のとおり,被告人を始めとするスーパーフリーの関係者らが長期間にわたり同種行為を繰り返すうちに,次第に巧妙化し,組織的かつ計画的に行われるようになり,新しくスタッフに加わった者らもその様子を見聞きするなどして順次習得していったものである。そのため,回しに参加する関係者らの間では,これらの手口について,その都度指示したり確認し合わずとも,各人が暗黙のうちに状況に応じてそれぞれの果たすべき役割を了解し合いながら,回しの完遂に向け相互に連携して行動し合えるまでになっていたものである。

イ 本件各犯行の態様
(ア) まず,判示第1の犯行において,被告人や共犯者らは,当初から被害者甲を姦淫する意図の下に,事務所内で鍋パーティーを行うなどとして,その友人でスーパーフリーに出入りしていた女性を通じて,被害者甲を事務所に誘い出した上,その酒席の際に,《中略》などして同女を泥酔させ,完全に意識を失うまでに至らしめている。
そして,被告人や共犯者らは,このように泥酔した被害者甲を救護するどころか,完全に意識を喪失していることに乗じて,同女を事務所内の別室に連れ込み,その密室において《中略》など,様々に同女を弄んだ上,被告人ら3名が順次姦淫行為に及んでいる。しかも,その間,被告人らは,共に飲み会に参加していた女性らについても《中略》ブロッキングしている。
その後,被害者甲は,意識を失ったまま嘔吐し,その頭部,顔面,上衣等が多量の嘔吐物にまみれるなど,多量の飲酒によって正に生命に対する危険も生じていたというのに,被告人や共犯者らは,自分たちの行為によってこうした危険な状態に陥った同女の生命の安全に微塵たりとも配慮を示すことなく,事務所内の風呂場でその身体を洗ったのみで,全く意識のない同女を洗面台前の脱衣所に放置したばかりか,あろうことか,なおも飽き足らずに再び被告人及び共犯者が順次姦淫行為に及んでいるのである。

(イ)a 次いで,判示第2の犯行についてみると,被告人は,かねてより,毎年4月に開催していた大学新入生歓迎のイベントについて,スタッフやOBらに対し,「4月は撃てる」,「4月のためにSに事務所を置いている」,「新入生の女は酒も弱いし,《中略》も弱いから,すぐにでも回せるんだ」などと言って,回しの実行に強い意欲を示していたところ,判示第2の犯行は,このような被告人を中心とする同サークルの関係者らが,こうした意図の下にイベント開催後の二次会を企画し,飲み会に慣れていない女性の新入生を狙って二次会への参加を募った上,何も知らない新入生である被害者乙に狙いを定めて,暗黙の了解の下に,その習熟した前記のような様々な手口を駆使しながら,同女を囲むようにして,あらかじめ準備したスペシャルサワーを勧めたり,《中略》何度も一気飲みを強要したり,《中略》無理やり飲酒させるなどして,同女を泥酔させ抗拒不能の状態に陥らせたものである。
そして,被告人や共犯者らは,被害者乙が泥酔して意識もうろう状態に陥っているにもかかわらず,救護措置をとろうとしなかったばかりか,同女を二次会会場の居酒屋から連れ出し,非常階段を1階下ろして,人気のない判示の場所まで連行した上,非常階段に面した判示のフロアーにおいて,普段は靴底に付いた泥やほこりを落とすために用いられる起毛部分がアクリル製の来訪者用玄関マットの上に仰向けに寝かせ,《中略》姦淫行為に及び,さらに,各共犯者間で,回しが行われていることを口伝てに順次連絡を取り合いながら,結局,合計13名もの男たちが次々と同女を姦淫するに至っている。
b(a) この点,被告人は,事前にスタッフ等に対して,回しを奨励する意思も動機もなく,二次会の場で回しを実行するよう指示ないし示唆するような言動は一切とっていないなどと弁解している。
(b) しかしながら,被告人が,平素より,スーパーフリーのスタッフやOBらに対し,回しを奨励するような言動を繰り返し,とりわけ,毎年4月には,大学新入生歓迎のイベントに関連付けて,新入生を対象とした回しの実行に強い意欲を示していたことは,既に認定したところから明らかであり,被告人の上記弁解は,このような被告人の言動に沿わない不自然なものというほかない。
(c) しかも,P,Q,E,G及びMの各公判供述等の関係各証拠を総合すれば,被告人は,かねてより,スーパーフリーの東京のスタッフやOBらに対し,地方のスタッフを回しに参加させて,やる気を引き出すといった趣旨の話をしていたところ,平成14年11月以降は,札幌支部が開催するイベントの準備に向けてしばしば札幌を訪れ,同支部のスタッフであったP及びQと打合せを重ねる中で,Pらに対し,「少なくとも,東京に来たら2人撃たせてやる。3人撃たせてやる。」などと話していたこと,平成15年4月19日開催のイベント等の後にも,事務所で回しが行われたが,折から上京して回しに参加したQが女性2人を回したことなどを被告人に伝えると,被告人は,「ああ,2人か,残念だな」などと答えていたこと,判示第2の犯行当日に開催予定のイベントに向けたミーティングが始まる前ころには,被告人は,スタッフらに対し,「27日も来るから,27日も撃たせてあげられるように頑張ってよ」などと話していたこと,判示第2の犯行後,泥酔した被害者乙ら複数の女性を更に事務所に連行した際に,被告人は,折から上京していたPに対し,「撃っていいよ」と言って,回しへの参加を直接勧めたことなどが認められるのであって,これらの事実は,正に被告人の判示第2の犯行に向けた強い意欲を端的に示すものということができる。
なお,被告人は,上記言動について,PやQらが女性と合意の上でセックスができればよいという趣旨にすぎないとか,Pに直接姦淫を勧めたのも,形式的なほんの一言にすぎないなどと弁解するが,これまた,実態から遊離した弁解というほかなく,到底採用の限りではない。

(ウ)a さらに,判示第3の犯行についてみると,被告人や共犯者らは,他の学生団体が主催するパーティーに参加した上,前同様の意図の下に,そこで知り合った女性数名を二次会の名目で判示第2の犯行場所でもある判示の居酒屋に誘い出し,何も知らないまま酒席に参加した被害者丙に狙いを定めて,同様の手口で,《中略》同女を泥酔させて抗拒不能の状態に陥らせたものである。
そして,被告人や共犯者らは,泥酔して意識もうろう状態に陥っている被害者丙に対しては,救護措置をとろうとしなかったばかりか,同女の友人らに対しては,《中略》ブロッキングしながら,被害者丙を前記居酒屋から連れ出し,非常階段を1階下ろして,判示第2と同じ人気のない場所まで連行した上,同女を同じ玄関マットの上に寝かせ,《中略》姦淫行為に及び,さらに,各共犯者間で,回しが行われていることを口伝てに順次連絡を取り合うなどしながら,合計5名もの男たちが次々と姦淫し,あるいは姦淫しようとしている。
のみならず,犯行の際には,被害者丙が,アルコールの影響により身体の自由が奪われる中,「何すんのよ」,「やめて,嫌だ」,「こんなのおかしいよ」などと精一杯の拒絶の態度を示していたのに,被告人や共犯者らは,この必死の懇願を無視して姦淫行為を継続したばかりか,かえって,《中略》同女を愚弄する言葉を吐いているのである。
b(a) なお,弁護人は,判示第3の犯行について,被告人らは,他の学生団体が主催するパーティーに参加した後,偶々,各自が女性を同行するなどして判示の居酒屋に集まったものにすぎず,事前に犯行を計画していたものではない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。そして確かに,この犯行については,被告人及び共犯者らがあらかじめ飲み会の場所や参加人数,各人の役割等を打ち合わせて犯行を準備していたような形跡はうかがわれない。
(b) しかしながら,被告人及び共犯者らは,一度参集するや,特段の打合せもないままに,前にみたような様々な手口を駆使し,相互に連携して,いともたやすく判示第3の犯行を完遂しているのであって,この事実は,正しく,スーパーフリーが,条件さえ整えば,特段の打合せもないままに,その場で直ちに輪姦行為に及ぶことのできる高度に組織化された輪姦集団であったことを,端的に示すものとみるべきである。さらに,被告人自身も,当公判廷において,「本件の飲み会を開く際に,誰か適当な人がいれば,回しができるのではないかとの下心が全くなかったとは言えない」と述べていることも考慮すると,被告人らが事前の打合せもないままに犯行に及んでいることをもって,被告人の罪責が何ら軽減されるものでないことはいうまでもない。

(エ) そして,以上のような犯行態様からも明らかなように,本件各犯行はいずれも,同種行為を反覆累行することにより,通常の飲み会を装って女性を泥酔させては輪姦する手口に習熟していたスーパーフリーの関係者らが,周到な準備の下に実行した組織的かつ計画的犯行であって,もとより,烏合の衆による偶発的犯行とは異質なものといわなければならない。しかも,被告人や共犯者らは,あらかじめ狙いを定めた各被害女性を姦淫するために,通常の学生同士の飲み会と油断させた上,前記のように巧妙な手口を駆使することにより,アルコール度数の高い酒を際限なく飲ませて心神喪失又は抗拒不能の状態に陥らせたばかりか,被害女性らの生命や身体等に危険を及ぼしかねないほどに泥酔させたというのに,その後も全く同女らを救護しようとしていないなど,卑劣極まりなく,各被害女性の生命や身体等の安全に全く配慮しない危険な犯行でもある。しかも,既に個別にみたとおり,被告人らは,本件各犯行において,野獣が群がるかのように次々と各被害女性の貞操を蹂躙するなど,陵辱の限りを尽くしているのであり,こうした,各被害女性の人格や心情を一顧だにすることなく,単なる自己の性欲のはけ口ないし快楽を得る道具としてのみ扱うような本件の各犯行態様はいずれも,冷酷非道というほかなく,被告人らのすさんだ精神状態を如実に示すものである。

(3) 本件各犯行の結果
そして,本件各犯行により生じた結果は,いずれも誠に重大である。
ア(ア) まず,被害者甲(判示第1)は,泥酔させられて心神を喪失した状態で,被告人及び共犯者ら3名から順次延べ5回も姦淫され《中略》るなど,被告人らによって陵辱の限りを尽くされただけでなく,意識のないまま嘔吐するなど,多量の飲酒によって生命に対する危険にもさらされたのである。
(イ) そして,被害者甲は,犯行当時こそ,意識を完全に喪失していたため,被害事実に対する認識や記憶を欠いていたものの,後に警察に呼ばれて,《中略》初めて本件犯行を知るに至ったものである。
その際の心境について,同女は,《中略》目の前が真っ暗になるとともに,私の意識を失わせて,被告人らがこのように野獣のような行いをしていたかと思うと,身震いがし,とても人間のすることとは思えなかった,姉にだけ被害の事実を打ち明けて,2人で抱き合って泣き続けたなどと述べており,同女が受けた恥辱感ないし精神的衝撃は極めて大きなものであったことがうかがわれる。
(ウ) さらに,被害者甲は,その後,食欲を失って大きくやせた時期があり,最近においても,検察官から事件のことを聞かれると自然と涙が出てくる,リラックスしているときや,友人たちと楽しい時間を過ごしているとき,あるいは街中で犯人たちに似ている男性を見かけたときなど,日常生活のあらゆる場面で,ふと被害のことを思い出してしまうなどとも述べている。また,被害を知ったときに両親が受ける苦しみ,悲しみのことを考えると,とても打ち明けられないなどとして,生涯,被害のことは両親には言わないつもりであると述べているのであり,同女が現在もなお抱えている精神的苦痛や苦悩,更には,自己の最も深刻な悩みを両親にも打ち明けられないことからくる葛藤を考えると,本件犯行が同女に与えた打撃は甚大というべきである。

イ(ア) 次に,被害者乙(判示第2)についてみるに,前記のとおり,同女は,被告人ら13名もの男たちから相次いで輪姦されることによって,その性的自由を徹底的に蹂躙され,陵辱の限りを尽くされたばかりか,多量の飲酒を強要されることにより,このように多数の者に順次姦淫されていることにも全く気付かなかったというのであり,昏睡期に近い泥酔期にまで至り,場合によっては死亡する危険も生じている。
(イ) さらに,被害者乙は,犯行当時は,被害状況に関する認識や記憶はなかったものの,翌朝になって,あろうことか共犯者の1人であるBから,《中略》などと言われて,前夜の悪夢のような被害の事実を知り,絶望的な気持ちに陥ったにとどまらず,本件犯行のために,自らの靴も財布も携帯電話機も紛失させられたというのに,その場にいた関係者らから,謝罪やいたわりの言葉を全く掛けられることもなく,電車代として1000円札を1枚渡されただけで,トイレのスリッパを履くという惨めな姿で帰宅することを余儀なくされているのである。
(ウ) そのため,被害者乙は,事件後もしばらくは,本件被害に遭ったことを親にも打ち明けられずに,思い悩み続けていたというのであり,本件被害後の心境等として,食料を買い込んで食べては吐く行為を繰り返すという過食症,容易に眠りに入れないという不眠症等に悩まされるとともに,あれもしたいこれもしたい気持ちで一杯だった大学生活に対して,何をするにも気力が湧いてこなくなった,大勢でする飲み会には絶対に行かないし,街角で黒っぽいシャツやスーツを着た茶髪の男性が勧誘等をしているのをみると,スーパーフリーのスタッフのような感じがして,嫌悪感が湧くなどと述べているのも,至極もっともというべきである。
(エ) しかも,被害者乙は,本件犯行に伴って,《中略》肉体的苦痛が多大であることはもとより,その被った精神的な衝撃や苦痛,恥辱感や喪失感・絶望感が余りにも重大かつ深刻であることは,いうまでもなく,同女は,現在もなお,その精神的な痛手から立ち直ることが相当に困難な状況にあることがうかがわれる。
(オ) そして,このような被害者乙の様子を目の当たりにしながら具体的な手助けを何もしてやれない両親の心労や心痛には,察するに余りあるものがあり,本件が,被害者乙のみならず,その家族に対しても重大な精神的衝撃及び苦痛を与えたこともまた明らかである。

ウ(ア) さらに,被害者丙(判示第3)についてみても,同女は,泥酔させられて抗拒不能の状態に陥り,被告人を含む合計5名の者に姦淫され,あるいは姦淫しようとして《中略》,その性的自由を徹底的に蹂躙されたものである。
(イ) しかも,既にみたとおり,被害者丙は,被害を受けている際に,アルコールの影響により身体の自由が奪われる中,「何すんのよ」,「やめて,嫌だ」,「こんなのおかしいよ」などと精一杯の拒絶の態度を示していたのに,被告人らから,これを全く無視されたばかりか,《中略》などと同女を愚弄するような言葉を聞かされながら,ただひたすら被告人らの度重なる陵辱行為に耐えていたというのであり,その間に同女が受けた肉体的,精神的苦痛は誠に甚大である。
(ウ) さらに,被害者丙は,被害直後,かろうじて立ち上がり,判示の居酒屋店内の女子トイレにおいて,自らの着衣に付いた被告人らの精液をトイレットペーパーで拭くなどといった惨めな作業をしていた際,同女が泣いているのを察知して女子トイレに押し掛けた被告人らから,「しっかりしてくれる」,「みんなの前で泣かない方がいいよ」,「おれたち無理やりじゃないよね」などと身勝手で思いやりのかけらもない発言を浴びせられたばかりか,その後,同女が,被告人らから受けた蛮行について涙ながらに抗議すると,その場にいた被告人らから,口をそろえて,「何のことだか分からない」,「酔っ払いすぎだよ」,「意味分からない」ととぼけられるなど,あたかも同女が悪酔いして理由もなく絡んでいるかのような態度をとられているのであり,公衆の面前で,被告人らからこのようにいわれのない侮辱的な言葉を立て続けに浴びせられた同女の心境は,察するに余りある。
(エ) そのため,被害者丙は,被害直後に警察に本件被害を申告したものであるが,事件後の心境として,しばらくは人と接するのが怖くなった,その後,友人の支えを受けてどん底からは次第に立ち直っていったものの,平成15年10月ころに,人がたくさんいるような場所にいると,深刻な精神的ストレス等に基づき一時的に呼吸をすることが困難になるという過換気症候群を発症し,1か月くらいは,常にビニール袋を持ち歩く生活を余儀なくされ,その後も,時折その症状に悩まされていると述べている。さらに,同女は,悩んだ挙げ句,同年夏ころ,本件被害を母親には打ち明けたものの,相当なショックを受けている母の姿を見て申し訳なく思うとともに,父親に対しては,心底傷つくと思われるので,被害事実を絶対に話すことができないと述べているのであって,同女が本件被害による精神的なダメージから現在もなお苦しめられ続けていることは明らかである。
(オ) また,被害者丙から本件被害を打ち明けられた母親は,娘の身を案じながら,夫にも相談することができず悩んでいる様子がうかがわれるのであり,その被った心痛や心労も多大なものがあって,本件が被害者丙のみならずその家族にも深刻な傷痕を残しているのである。

エ(ア) なお,各被害女性は,大学生らによる飲み会の席であったとはいえ,それぞれに見ず知らずの男性が居住する事務所を訪れたり,求めに応じて酒を繰り返し一気飲みするなど,不用意な面があったことは否定し難いところである。
(イ) しかしながら,各被害女性はいずれも,スーパーフリーについての悪評など全く知らず,自己が被告人らによる回しの標的とされているとはうかがい知ることもできないまま,飲み会の席に参加しただけで,思いもかけず不運にも本件各被害に遭ったものである。しかも,本件各犯行が,既にみたとおり,周到な準備の下,組織的かつ計画的に巧妙に仕組まれた常習的犯行の一環であることを考慮すると,各被害女性が前記のような手ひどい仕打ちを受けるべきいわれなどあり得ないものであり,本件各被害に直結するような落ち度があるといえないことも当然である。

オ 以上のように,各被害女性は,被告人らの蛮行によって,大学生活への期待を無惨にも踏みにじられたばかりか,陵辱の限りを尽くされて,その人生が一夜にして暗転させられたものであり,精神的に重大かつ深刻な打撃を受けた結果,それぞれに,既にみたような後遺症や精神的な苦痛に苛まれるに至っている。これらのことからすれば,被害者甲が,「女性をおもちゃのように扱って楽しんでいる犯人たちの考えは,全く理解できない。とても,人間のやることではない。厳重に処罰してほしい。」,「どうして自分だけが苦しい,悔しい思いを堪え忍んでこれからも生活していかなければならないのかという納得できない気持ちも湧いてくる」などと述べ,被害者乙も,「私にこのようなひどい仕打ちをした人たちを絶対に許すことはできない。私の大切な大学生活をめちゃめちゃにし,私の人生を狂わせた犯人は,一生刑務所に入れておいてもらいたい。」などとその心情を吐露し,被害者丙も,「犯人から差し出されたお金というだけで気持ち悪く,到底示談をする気にはなれない。被告人ら全員を厳重に処罰して,できるだけ長く刑務所に入れてほしい。」などと述べて,いずれも被告人らに対する厳重処罰を求めていることは,至極もっともというべきである。
しかるに,現段階において,被告人から各被害女性に対する慰謝の措置等は全く講じられていない。もとより,被害者丙は,被告人らからの損害賠償金の受け取りを一切拒否しているほか,被害者乙も,被告人からの損害賠償金については受け取りを拒否し,共犯者以上の厳しい処罰を求める旨の意思を示しているのであって,同女らがスーパーフリーの代表であった被告人に対して抱く処罰感情には峻烈なものがあるのである。

カ 加えて,それぞれに名の通った大学に在籍している学生らで構成され,一時は一流大学から公認されていたサークルにおいて,本件のような常軌を逸した悪質な犯罪行為が常習的に行われていたという事実が発覚して,期待される大学生像との余りにもかけ離れたその実態が社会に大きな衝撃を与えるとともに,関係各大学や大学生一般への信頼も大きく損なわれたことがうかがわれるのであって,本件各犯行による社会的な悪影響も深刻である。また,本件各犯行は,通常の大学生活においても一般にみられる新入生歓迎等の各種パーティーや二次会などの酒席を舞台として反復累行されたものであり,被告人も認めるように,その手口において模倣性が強く,類似の犯行を招きかねないものであることからすると,一般予防の観点も軽視することはできない。

(4) 被告人が本件各犯行において果たした役割等
ア 犯罪集団内における被告人の地位,役割
(ア) 既にみたとおり,被告人は,長年にわたってスーパーフリーの代表を務める中,同サークルにおけるイベントの企画・運営等の活動の正に中心的存在として,組織全般の運営に携わり,これを統括していた者であるが,年を経るに従って,組織内における発言力及び影響力を飛躍的に高めるとともに,他のスタッフらを統制するなどして,本件各犯行当時には,他のスタッフら同サークル関係者とは比較にならないほどの権勢を誇るに至っていた。
その一方で,同サークルでは,平成11年ころより,回しが繰り返し敢行されるようになっていたところ,被告人は,その当初から,自ら中心となって,一貫して回しに参加し続けている。しかも,被告人は,Bと共に,試行錯誤の末,《中略》スペシャルサワーを開発するなど,回しの手口を自ら編み出しているほか,平素より,年下のスタッフ等に対し,回しを奨励するような言動を繰り返すなど,先頭を切って,組織ぐるみで回しを実行する意欲を示していた。このような被告人の指導の下,同サークルでは,回しを容認し自己目的化するような雰囲気が次第に醸成され,被告人同様に回しの実行を期待ないし意欲する者らが,被告人の回りに群がるように集まって,互いに前記のような巧妙な手口に磨きをかけるなどした結果,本件当時には,回しに参加する者らの間で,その都度具体的な手口等を確認し合わずとも,各人が暗黙のうちに回しの完遂に向けて相互に連携して行動し合えるなど,輪姦を目的とする高度の組織的な犯罪集団が形成されていたのである。
もとより,被告人は,同サークルの代表として,そのスタッフ等を厳に戒めて,本件のような同サークルを舞台とする犯罪の発生を抑止すべき立場にあり,実際上も,その絶大な影響力等をもってすれば,同サークルの在り方も全く異なったものになったであろうことは,容易に推察されところである。ところが,被告人は,これを抑止するどころか,かえって,同サークルにおける地位や権勢を利用して,スタッフ等を指導しながら,回しを容認して自己目的化するような雰囲気の醸成に努め,回しに積極的に参加する者らと共に,自らの欲望充足という点からは誠に都合の良い組織を形成して,その頂点にとどまり続けていたものである。そして,本件各犯行がいずれも,前記のように,同サークルが組織ぐるみで常習的に敢行した犯行の一環であることを考慮すると,このような組織的犯罪集団の形成に主体的かつ積極的に寄与していた被告人の責任は,他の共犯者らに比して格段に重いことが明らかである。

(イ) この点,弁護人は,判示第2及び第3の各犯行について,被告人は,事前に回しの実行を計画したことなどなく,他の共犯者らに対してその実行を指示ないし命令した事実もなく,共犯者らが,主体的に被害女性らに対して直接飲酒を強要するなど積極的に各犯行を敢行したものであるから,被告人は決して首謀者ではあり得ないし,むしろ,スーパーフリー関係者である共犯者ら1人1人が自らの意思に基づいて犯行に及んだものであって,その責任の程度に何ら径庭がない旨主張しており,被告人も,おおむねこの主張に沿う弁解をする。そして確かに,被告人が,上記各犯行において,事前に具体的な計画を練ったり,他の共犯者らに対し回しの実行等を指示ないし命令したり,あるいは,自ら被害女性に対し飲酒を強要したりした形跡のないことは,弁護人指摘のとおりである。
しかしながら,上記各犯行がとりわけ悪質といえるのは,既にみたように,共に組織ぐるみで敢行され,しかも,その当然の帰結として多数の者が被害女性の貞操を踏みにじっている点にあるところ,このような組織的犯行において,その代表である被告人が特段の指示等をしなくとも,各人が適宜役割を分担して回しの完遂に至ったということは,被告人の指導の下,それだけ高度の組織的犯罪集団が形成されていたことの証左であって,弁護人が指摘する事情が被告人の刑責を何ら軽減するものでないことは,既に検討したところからも明らかである。

イ 本件各犯行における被告人の具体的役割
(ア) 判示第1の犯行について
a 被告人は,事務所内で開催する飲み会を口実に被害者甲を呼ぶことを提案し,B等を通じて,常々回しの場所として用いていた密室ともいうべき同事務所内に同女をおびき寄せた上,これを泥酔させて姦淫する意図の下に,共犯者であるBやCらと共に,前記のような手口を用いて,《中略》スペシャルサワー等の酒を多量に飲むよう同女に強要している。そのため,同女が完全に泥酔するや,被告人が,《中略》ブロッキングの役割を積極的に果たした後,共犯者らに続いて,泥酔状態で意識を失っていた同女を姦淫するに至っている。
b このように,被告人は,同女を回しの対象とすることを企てた張本人であり,その犯行態様をみても,自ら主体的かつ積極的に関与した上,欠くことのできない重要な役割を果たしている。しかも,被告人は,前記のとおり,同女が意識を失ったまま嘔吐するという危うい状況が現実に生じた後も,なお飽き足りず,事務所内の洗面台前通路に同女を寝かせたまま再び姦淫行為に及ぶなど,同女に対して陵辱の限りを尽くしているのであって,同女に対する憐憫の情など微塵も持ち合わせていない様子が顕著にあらわれている。

(イ) 判示第2の犯行について
a 被告人は,かねてより,「4月は撃てる」,「新入生の女は酒も弱いし,ゲームも弱いから,すぐにでも回せるんだ」と豪語するなどして,毎年4月に開催していた大学新入生の歓迎イベント後の回しの実行等につき,並々ならぬ意欲を示していたところ,判示第2の犯行は,こうした被告人の意欲が正に実行に移されたものと捉えることができる。しかも,その結果,被告人を含め合計13名もの男たちが次々と被害者乙の貞操を蹂躙するという未曾有の被害をもたらしている。
b 被告人の具体的な関与形態をみても,被告人は,二次会のさなか,共犯者のFから,回しのため被害者乙を判示の犯行場所に連行した事実を知らされるや,喜び勇んで同所に赴き,全く躊躇することもなく,酔いつぶれて意識もうろう状態にあった同女を進んで姦淫しているのである。

 (ウ) 判示第3の犯行について
a 被告人は,他の学生団体が主催するイベントに参加した後,他の関係者らに対して「二次会をやれたらやろう」などと言って女性を連れてくるよう指示した上,人数が集まるや,いつものごとく,他の共犯者らと連携の上,ターゲットの被害者丙に《中略》などしており,しかも,Eが,同女を酔いつぶして,回しのために人気のない判示の場所に連行しようとするや,他の共犯者らと共に,《中略》ブロッキングの役割を果たしている。その後,被告人は,共犯者と「撃ったの」などと言葉を交わしながら犯行場所に赴き,これまた全く躊躇することもなく進んで姦淫に及んでいる。このように,判示第3の犯行においても,被告人の果たした役割は重要かつ不可欠なものであって,自ら積極的に姦淫にも及んでいるのである。
b のみならず,被告人は,犯行直後に,被害者丙から,判示の居酒屋の店内で涙ながらに抗議されても,これを無視するような態度をとり,同女に深刻な精神的ショックを与えているほか,その帰り道にも,共犯者らと「あれは合意の上だった」などと言い訳を述べ合うなどしているのである。
このように,自己の保身しか考えず被害者丙を愚弄するような言動を繰り返した被告人の態度からすれば,犯行後の情状も劣悪である。

(エ) まとめ
以上みてきたとおり,本件各犯行における被告人の具体的な関与態様からみても,被告人の犯意は極めて強固かつ積極的なものであったばかりでなく,被害女性らの人間性を全く無視して,あたかも性的快楽を得るための道具であるかのように扱う被告人の態度は,そもそも人間としてあるまじき下劣かつ醜悪なものであり,誠に悪質である。
さらに,被告人は,スーパーフリーの代表として,名実共に共犯者らである他のスタッフ等を指導する立場から,回しの場となった飲み会やイベント後の二次会を主催し,更には,被害女性の友人をブロッキングしてスタッフ等に回しの遂行を促すなど,本件各犯行を計画し主導していたものと認められ,その責任は,いずれの共犯者らに比しても重いといわなければならない。
しかも,被告人は,自らの責任が誠に重大であるというのに,本件各犯行の主導性,計画性について,前記のように様々な弁解を弄し,刑事責任は他のスタッフ等と同程度である旨強弁しているのであって,その反省の姿勢には重大な疑念が残るというほかない。

ウ 犯行動機等
弁護人は,本件各犯行について,学生の間に性に対する劣悪な考え方が蔓延する風潮がある中で,被告人も,他の幹部スタッフらと共にその風潮に押し流されてしまった末に,本件各犯行に及んだものである旨主張している。
しかしながら,仮に,学生間に弁護人指摘のような性に対する安易な風潮があるとしても,被告人は,回しを始めたとされる平成11年当時でも24,5歳,本件各犯行当時には27,8歳という既に分別を有すべき年齢に達していた。しかも,被告人の述べるところでも,スーパーフリーの先輩には,回しを実行していた者はいなかったというのである。そうすると,被告人は,同サークルに回しを容認して推進しようとする風潮を持ち込み,その後は,自ら主導して,自己の性欲を満たすためだけに回しを繰り返すようになり,本件においても,被害女性らの人格や心情等を一顧だにすることなく,専ら自らの性欲のはけ口として,本件各犯行の実行に及んだものとみるほかないのであって,被告人が本件各犯行に及んだ動機は,誠に安易かつ身勝手なものとして,酌量の余地など全くないというべきである。
加えて,被告人は,自らが回しを累行していたにとどまらず,前記のとおり,同サークル内で回しを助長する発言を繰り返し,スタッフやOBらに対して,日常的に回しに関する話題を吹聴しては,将来のある多数の若いスタッフらを本件各犯行に巻き込んで回しを繰り返していたものである。このように,被告人が女性の人権を無視する態度は甚だしく,その規範意識や倫理観の欠如は明白であって,被告人の犯罪性向も相当に深刻といわなければならない。

(5) そうすると,被告人の刑事責任は誠に重大というべきである。

3 被告人のために酌むべき事情
他方,判示第2及び第3の各犯行については,被告人が各被害女性に対して泥酔状態に至らせるまでの飲酒を直接に強要したものではないこと,被告人は,前記のとおり,本件各犯行に関し一部に不合理な弁解はしているものの,各公訴事実自体はいずれも認めるとともに,「被害者の方たちには本当に申し訳なく思い,心よりおわびを申し上げたい」と述べるなど,それなりに反省の態度を示していること,被告人は,本件によって,マスコミ等で広く報道されるなど,相応の社会的制裁を受けていること,被告人の父親及び友人が情状証人として当公判廷に出廷し,今後の被告人の更生に協力する旨述べていること,被告人の母親も,被告人の身を案じているとうかがわれること,被告人の父親が,被告人の意を受けて,被害者の慰謝に尽くす意向を示していること,被告人には前科前歴のないこと,その他被告人のために酌むべき事情も認められる。

4 結 論
しかしながら,被告人及び共犯者らが,巧妙な手口をもって組織的に女性を泥酔させた上,代わる代わる輪姦する犯行を順次敢行したという,本件各犯行の常軌を逸した悪質性,累行性,結果の重大性,本件各犯行における被告人の主導的役割やその具体的な関与の態様,この種事犯の常習性等の諸事情に加え,前記のとおり,被害者及びその家族も含めて,その被害感情がいずれも極めて峻烈であることなどにも照らせば,前記のような被告人のために酌むべき事情を十分に考慮してもなお,被告人に対しては本件各犯行における役割に応じた厳罰をもって臨むべきである。以上の諸事情を総合考慮すると,被告人に対しては懲役14年に処するのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。

平成16年11月2日
東京地方裁判所刑事第2部

           裁判長裁判官   中谷雄二郎

裁判官   佐伯恒治

裁判官   松永智史